医療、医院、病院、福祉、歯科医院、研修、の専門家 / 一緒に地域医療に貢献しませんか?病院、医院、歯科医院、介護、福祉のエキスパート

中島慶八郎氏の医療ブッタ斬り

過去のコラム

  • 第23回
    医療と福祉の規制緩和

    I 医療の規制緩和
    先ずは、混合診療の導入であろう。IPSを含めた高度先進医療を普及させるには全てを保険でまかなう事は財政的に不可能である。だが、患者はその使用を要望している。特に、難病患者は再生医療を含めて、あらゆる治療を切望しているのである。
    これらの要求を満たすには混合診療を導入するしかない。一部では金持ちのみが受けられる悪制であると言われる意見があるが、低所得者に対する一定の診療ガイドラインを作って対応をしたら良いのではないか?医学にとどまらず、創薬に関しても画期的な新薬や、対象者の少ない、いわゆるオーファンドラッグ等も自由に作られ、自由に使用できるメリットがある。新薬の申請から承認までの期間短縮、治験の制限の規制緩和がなされれば患者にとって大きなメリットである。

    しかし、その一方で先進医療や画期的新薬は安全性が十分に担保されていない。これは全てに言えることではあるが、規制緩和は自己責任の範疇に入る。ということである。セルフメディケーションを促進する為に診療報酬は急性疾患が対象となり、いわゆる生活習慣病は自分でコントロールすることになる。そのために診療報酬の対象となる疾患を絞っていく医薬品も生活習慣病のための薬はOTCとする。等々である。
    インターネット販売とする。ということもその一つである。

    一方、従来は医師の独占業務であった医療行為が医師の包括的指示の下、一定の研修を受けた者が医療行為を行えるようになる。これは医療行為の規制緩和と言えるであろう。将来、我が国の人口構造の極端な変化に対応するためには必要なことである。チーム医療を行うために職種が揃わない場合は、出来る人が行う必要がある。この場合も、患者の安全を担保する制度が必要である。

    放射線技師の胸部X線の取扱や、歯科衛生士の口腔ケア、栄養士とナースによるじょくそうのケア、薬剤師の在宅服薬指導は一日五人までが緩和されるか?など、現在既に認められている行為があるが、これが更に増加することが見込まれる。度々の部分的な改正はあったが、医師法、医療法、歯科医師法、薬剤師法等々、国家資格者に与えられた法律が根本的に改正される。医療で混合診療を認めるということは、近い将来に医療と福祉の連携ができるためには、欠かせない要件となる。

    II 福祉の規制緩和
    介護報酬は診療報酬と同様に制度が複雑になってきた。従来は老健、グループホーム、特養等、個別化して施設基準が決まっていた。しかし、最近は大型化、総合形となってきている。その現状は小規模では経営が困難であり、資格者を充実させ得ない。地域包括ケアを進めるにあたり、同一敷地内という、同一の範囲が拡大されるがそこに医療と福祉の連携および、チーム医療、チーム介護へ国も誘導している居宅と医療、介護が一定の場所に存在する、いわゆる医療モール又はサ高住等が現れた。

    人口減少と高齢化をたどる我が国では必要なことであるが、一方で商業化した大手チェーンが有利となり、悪質業者が出現することも心配なことである。高齢化していく国民が安心して生活できるためには最も必要な形で、それは街造りに他ならない。行政・医療・福祉が共同して街造りを行うことが求められている。現在、小規模多機能が泊まりを認めたり、老健がデイケアを作ったり、各機能が多機能化している。一番の規制緩和は兼務を認めて行くことだと思う。施設基準で規定されている人が併設されている他の施設の仕事を兼務できるという制度である。人材不足、特に過疎の地域では大変助かる制度ではあるが、悪用される可能性もある。この程、左様に規制緩和と安全性は両刃の剣である。介護が減少する我が国において、在宅介護は困難になりまとめて面倒をみる必要もでてくる。規制緩和と安全性の取り締まりをいかにうまくするか?2025年まであと10年待った無しである。2018年2024年と2025年までに医療と介護の同時改定がある。2024年には2025年以降の我が国の医療・介護を決定する、決定的な制度改正となる。2015年、2018年、2021年、2024年の介護改正法、2016年、2018年、2020年、2022年、2024年の医療保険の改正の動きに注目しよう。

  • 第22回
    2025年に向けて薬剤師の役割

    医学・薬学等の進歩と生活環境の変化によって、日本人の平均寿命は男性が79歳、女性が86歳、男女平均が83歳となり、男女の平均寿命でみると日本、サンマリノ、スイスの3カ国が83歳で1位(2013年WHO)となっている。とりわけ超高齢社会を迎えた日本においては、脳卒中の後遺症、人工透析、ペースメーカー、在宅酸素、自己インシュリン注射、緩和ケア等、疾病や加齢による身体機能・認知機能が低下している方々の生活サポートが喫緊の課題となっている。

    そこで国は国民皆保険制度や介護保険制度などの維持を前提として、2024年迄の10年間での大改革を始めた。その第一歩が、2014年の診療報酬改正である。今迄は診療報酬でいわゆる誘導をしてきたが、これからは医療法などの法律を改正してゆくという。先ずは医療機関の機能分化と効率化であり、特に高度急性期病棟や地域包括ケア支援病棟の新設及び主治医機能を中心とした医療と福祉の連携及びチーム医療の促進である。

    薬局は医療提供機関として、薬剤師は医療スタッフとして、チーム医療に参画することになる。これからの薬剤師は医療人として薬の知識を持つ専門家を基本としながら、OTC、サプリメントの活用、より良い看取りを含む在宅医療への関わり、地域における健康ステーションの役割等、更に多職種と協働(チーム医療)して前述の方々の生活支援(睡眠、栄養、運動、心の支援を含む)をすることが求められている。

  • 第21回
    医療保険制度の改革

    新聞紙上に医療保険制度の改革について記されています。
    例えば、1.高齢者の保険料の引き上げ、2.高額医療費限度額の引き上げ等々です。本来、診療報酬の次回の改定は平成28年度ですが、あまりにも問題が大きいので今から議論されています。
    10月15日に開催された社会保障審議会医療保険部会では、まず、大病院とは何か?が議論されました。500床以上の病院と特定機能病院ということにまとまりました。
    また調査の結果、その大病院で紹介状無しで診療を受ける人が実に外来の60~70%を占める事が判明したのです。大病院の勤務医の負担を軽減すること及び、重傷者の診療の確保のために診療所からの紹介状を持たない患者様の支払いには5,000円を加算することも凡そ決まりました。(ただし、救急と難病患者は除きます。)

    最終的には平成27年度中に各都道府県別に医療費の適正計画を定めることになりました。高齢化、少子化、過疎化等、都道府県別の実情に合った計画を作定することが義務付けられます。

    医療保険制度の現状は、財政的に待った無しです。国民の医療費の負担は、保険料、自己負担額等々、年齢ではなく、所得に応じて応分の支払いをすべきだと思います。新しい医療技術や新薬が保険適用になれば財政は更に逼迫します。
    今後の動きを注目しましょう。

  • 第20回
    医療と介護のギャップ

    医療の目的主体は疾病とその治療にある。介護の目的主体は生活支援、換言すれば、その人らしい人生が送れる事を支えることになる。

    しかし疾病は、生活と切り離せるのか?
    また、生活の中に疾病が入ってくる事を否定出来るのか?

    2014年8月現在、日本の高齢化は、実に、65歳以上は4人に1人、75歳以上は8人の1人となり、100歳以上の人は58,000人と公表されている。

    これらの人々は、或る時は医療が、或る時は介護が交互に、というくらい必要となり、医療と介護を切り離すことは困難な人々である。

    ところが医療と介護では基本的な姿勢が異なっている。
    目的(1)の違いは前述した通りであるが、目的が異なっていたために各々の教育(2)もまた、異なってきた。医療は細分化され、特に医師と中心に臓器別の研究が中心となってきた。その弊害を防ぐために卒後研修や、総合診療医の育成が最近、急速に普及してきている。

    介護の分野では、弱者を救うとうい形から、弱者の生活に寄り添うという形に変わってきている。単純なヘルパーのみではなく、介護福祉士という国家資格者も出て来ている。

    また、医療と介護では専門用語(3)も異なる。
    例えば、医療では患者さんと呼ぶが、介護では利用者さん等と呼ぶのである。

    更に、制度(4)の違いも大きい。
    医療は混合診療禁止であるが、介護は混合診療はOKである。

    給付(5)は医療では全国同一の点数管理で1点につき10円であるが、介護は単位管理であり、また1単位当たりの単価は地域によって異なっている。その単価は東京都が一番高い。

    ほとんどの医療職には守秘義務(6)が課せられているが、介護職のほとんどには守秘義務は課せられていない。

    一方、弱者(7)には3種類ある。
    イ.経済的弱者
    ロ.身体的弱者
    ハ.精神的弱者
    上記、イ、ロ、ハが重複しているケースが多い。

    身体的弱者には
    a.生まれつき
    b.慢性疾患
    c.急性疾患の後遺症
    d.加齢による機能低下

    精神的弱者には
    a.孤独
    b.精神的疾患
    c.虐待
    d.無視

    等が挙げられる。
    要するに、天災や不慮の事故を除けば医学・薬学の進歩や生活環境善により多くの人々が何らかの身体的、精神的問題を抱えながら長寿を全うしているのである。

    我が国の平均寿命は男性80歳、女性86歳と発表されている。
    これらの人々の人生を支えるためには医療職と介護職がチームを組んで対応することが最も重要なことである。

    しかし、現実には医療職同士、介護職同士でもお互いの職務を理解していないのが現実なのである。患者様本位、利用者様本位と言いながら、実は我々サイドでの考えを押し付けているのではないだろうか?

    自宅で過ごすか、入院するか、施設に入るか。
    手術をするか?胃ろうをつけるか、つけないか?
    福祉用具は?バリアフリーは?等々、本人の意見、家族の意見等を総合的に判断しなくてはならない。

    ところが、医師を始め、各職種は自己の職務に関する部分しか見ていないのは現実ではないだろうか。

    そのために、かかりつけ医(主治医)と、ケアマネージャーの立場が重要になってくるが、かかりつけ医は、一体どこまで患者の生活を見ているのだろうか?
    きちんと見れていない場合が多いのではないだろうか?
    下手をすると、そのようなかかりつけ医の意見がそのまま通ってしまう恐れはないだろうか?
    また、ケアマネージャーの能力の格差はないだろうか?
    特に医療職に対してマネージメント出来ているだろうか?
    この2職種の働きによって、その世界は大きく変わってしまう。

    どんな病気を持っていようが、
    介護度が5であろうが、
    その人がよりよい人生をそれなりに送るためには何が必要で、何をしてさしあげることができるのか?という視点で、その人に関わる人たちが、各々の立場でサポートすることなのである。

    言葉で言うのは簡単であるが、現実にはとても難しい。
    まずは顔見知りとなり、お互いの職種を理解し合い、チームを組むことであろう。

    医療職の代表であるかかりつけ医の幅広い能力と、介護職の代表である質の高いケアマネージャーの存在が大きなカギとなるであろう。

    2025年に向けて、もう待った無しである。
    先ずは行動することから始めよう。

  • 第19回
    医療費

    厚労省の発表によると、2012年度の医療費は38.4兆円である。年間1兆円増加していることから、2014年は40兆円を超えることが予想される。
    8月中旬の日刊紙、Y紙の報道によれば一人当たりの医療費が県別にランキングされていたが、トップは高知県の60万円、ラストは千葉県の30万円と、2倍の差があった。この事から医療費について検討してみたい。

    先ず、医療費の70%は病院(20床以上)で、そのうち診療所は30%である。
    また、県別に人口構成を考える必要がある。男性と女性、高齢化率等である。高齢化率が高ければ、一人当たりの医療費は多くなると思われる。では、県別の医療機関の構成はどうであるか?病院が多い県は一人当たりの医療費が高くなるかもしれない。
    県別による疾患構成の違いがあれば、それも要因と言える医療費が、多いから悪い、少ないから良い。のではなく、寿命との関係をみてはどうか?男女ともに日本一長寿の長野県は42万円で低いランクである。医療費と寿命はあまり関係がないのかもしれない。介護保険給付の一人当たりの県別ランキングが出ていないので寿命との関係は問題が多いが、医療費は少なくとも介護費が多かったりするため医療費と介護費とを併せて考える必要がある。そのほかに、検診の受診状況、ワクチン等の接種状況、県別に県民の健康に対する行政の取り組みと格差があるのではないか?

    適度な睡眠、バランスのとれた食事、適度な運動、そしてストレスをうまく発散できる生活対応が医療費を抑える大きな要素ではないだろうか?

  • 第18回
    混合診療

    安倍総理の第三の矢が放たれますが、その中に混合診療が取り上げられました。我が国の健康保険制度、いわゆる皆保険制度は1963年創立以来100%保険診療か?100%自由診療か?の2形式であり、保険診療と自由診療の組み合わせ、即ち混合診療は禁止されていた。
    その後、健康保険の財源が厳しくなり1984年に特定療養費制度が導入され、下記2項が認められた。
    1.病床利用代、食事代
    2.高度先進医療

    1は健康保険は、病気の治療に使用する事が目的であるから、自己負担とする。
    2は高度先進医療はリスクを伴い、一般的ではない事および、治療は高額なため、保険適用にはなじめないが困っている患者や、医学の進歩のために患者の自己負担で認めようとしているものです。

    2004年に規制改革・民間開放推進会議が内閣府に設置され、混合診療の大幅な拡大が提言された。

    1.国内での未承認薬(保険無適用)の臨床治験の場合
    2.必ずしも高度先進医療でなくても医療機関を限定して診療を可能とする
    3.ピロリ菌の除去等、回数を制限した上で自由診療を認める

    医学、薬学の進歩によって新しい医療技術が開発され、また治療が困難であった疾病やガン等に対する医薬品が次々と開発されて来た、外国では使用されているのに日本では何故認められないか?何故保険適用にならないか?
    長年の課題であった
    1.外国人のデータで日本人に適用できるか?
    2.新しい医療技術や新薬にはリスクが伴う事故が発生した時、患者の自己責任として処理できるのか?国や医療機関、医師の責任を問われるのではないか?
    3.すべてを保険適用するには財政的に負担が大きい
    4.経済的に裕福な人と、そうでない人との間に診療の格差がつく事は、健康保険制度の根幹にかかわるのではないか?
    5.自由診療は厚い医療で、保険診療は質が低下するのではないか?
    等々が、混合診療にまつわる問題点である。混合診療はなぜ不可能か?という訴訟が起こされ、2007年11月東京地裁が混合診療を禁止する根拠は、健康保険法上ないという判例が出され、その結果2008年4月に高度医療評価制度が創設され、高度医療の混合診療が拡大された。健康保険制度には高度医療限度額が設定されていて3割負担の患者でも月44,000円以上はすべて保険でカバーされている。
    したがって、高額な先進医療をすべて保険適用とするには財政的に困難である。混合診療は財政維持のための一つの手段である。反面、自由診療はその費用や薬の価格が医療機関や製薬企業が自由に決められるので経済的な視点で患者に診療格差を与える危険性が大きい。したがって、自由診療の可能な範囲をどの程度に、どこまで認めるか?又、別途に保険適用の診療の質の担保をすべきである。

    混合診療のメリット
    1.患者にとって、最新の医療・医薬品が利用できる。
    2.保険財政が助かり、健康保険制度が維持される。

    混合診療のデメリット
    1.リスクが大きい
    2.費用がかかる
    3.自己責任である

    自由診療が拡大すると、それを対象とする民間保険会社の活動が活発になり、下手をするとアメリカのように医療が保険会社によって左右される危険性が多い。

    2014年6月15日 衆議院決算委員会で混合診療について議論があった。論点は次の3項である。
    1.再生医療・・・臓器移植やIPS細胞の活用等々
    2.予防医療・・・セルフメディケーショ
    3.患者申請制度・・・同意書・自己責任の確認

    2014年6月末には安倍内閣の第3の矢の大網が発表される予定なので、その内容に注目しましょう。

  • 第17回
    DPCの動向
    (DiagnosisProcedureCombination 診断・処置、手術、検査・組み合わせ)

    我が国の診療報酬は出来高払いを原則としている。国は医療費の抑制を計るため、この出来高払いの診療の中身に着目した。すなわち、1990年台に入りレセプトにより請求される額が例えば心筋梗塞というレセプト上の病名で全国で5倍の差があることが判明した。診断・治療は医師の裁量権であるが、5倍の差はなぜ生じるのか?が問題となった。一方、1995年ころに九州産業大学の松田教授がアメリカで研究され、使用されてきたDPCに注目し、その研究をされていた松田教授の研究目的は疾患に対する標準的医療であった。国はこの松田教授の研究を診療報酬制度に取り入れる事と、診断群分類・包括評価を用いた定額払いとして導入することを2003年に閣議決定し、同年4月より導入した。この実施には2つのポイントがあった。
    (1) 取り合えず、DPC採用病院が赤字とならぬよう過去3年間の診療報酬の平均額にプラス係数をつけた点数にしたこと。
    (2) (1)の代償として疾患毎の診療内容を詳細に国に報告すること

    (1) は経営が黒字で安定する
    (2) は国に今までなかった疾患別の診療情報が集められる。
    この(2)が非常に重要である。導入当初、全国82の特定機能病院で始められたが、DPCを採用すると経営が楽になるとされ、2014年4月現在、全国1585病院(約49万床)が採用している。
    無論、DPC採用に関しては、7:1、10:1等の看護体制をとることや、詳細な国への報告が義務付けられている。2014年5月26日に開催された中医協で、このDPC制度がテーマとして取り上げられた。
    1. プラス係数を削減して近い将来(2018年?)にゼロとする
    2. DPC採用条件を緩和して採用病院を増加させる
    上記1、2が議論された
    1は今までのように経営が楽ではなくなる?また、診療情報は約10年経過しているので、国としてもそれなりに集められた。
    2は定額制の拡大である。
    日本医師会は根幹である。出来高制度に大きな影響を与えるのではないか?と警戒している。
    皆保険制度を維持するためには保険対象額の伸びをいかに抑えるか?DPCも、その1手段と解釈する必要がある。

    DPC Q&A
    先般記しましたDPCについて、下記の質問がございましたので解答いたします。

    Q. DPC制度において、例えばレセプト病名 心筋梗塞のレセプト請求額で自分の病院は全国の何番目か?どこどこ病院とは幾ら違うのか?は分かりますか?

    A. 残念ながら、現時点においては心筋梗塞の全国平均のレセプト請求額が分かるだけで自分の病院との比較しかできません。平均値よりどのくらい上か?下か?が分かるだけです。このDPCによるレセプト請求額が個々の病院や患者、一般市民に公表されるには相当なバリアがあり、時間を要すると思われますが患者の知る権利が更に認められてくるのでは?と、公開が期待されます。

  • 第16回
    介護保険制度の改定

    来年2015年には介護保険の改定が行われます。
    我が国の高齢化が進み、ますます介護保険の重要性が強まりますが、一方財源的にこのままでは維持が困難になると危惧されています。

    そこで国は現在、以下を検討中です。

    1.利用者負担1割を、収入のある人は2割負担とする事です。この収入とは医療保険に於ける収入とは基準が異なることが問題です。介護保険における収入とは
    a.現金収入(給料、配当等)
    b.固定資産
    c.預貯金(タンス貯金も含む)
    で、一人につき1,000万/年 以上ある人を対象にします。

    問題はcです。65歳以上の人の多くが、該当すると思われますが、誰が調査するかについて国は銀行協会に委任し、隠匿した人には重い罰則を課すと言われています。その人の財産を正確に捕捉するには、マイカード制にすることが一番ですし、何よりも医療保険で自己負担は1割、2割、3割と3段階あるのに対し、整合性がとれません。制度が異なるから、と言えばそれまでですが、混乱が生じると思われます。

    2.サービスの質の評価です。医療における機能分化で病院から施設、在宅に戻る人が増加しますが、在宅は介護力に限界があります。したがって、介護療養型病棟、特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者住宅、有床診療所等が活用されようとしている。特に問題なのはサービス付き高齢者住宅です。(以下、サ高住と言う)色々な業界がサ高住の建設を始めていますが、その内容(サービス)はピンキリです。特に「看取り」ができるのか?重介護度になっても居住できるか?医師、病院との連携がとれているか?介護者が充足しているか?入居料(入居金含め)は?国はサ高住の建設を推進しつつ、そのサービス内容を評価することを検討しています。

    3.医療と福祉の連携
    高度急性期から在宅までの利用を一気通貫で出来る仕組みのために、一中学校区当たり(人口約1万人)に1か所地域包括ケア支援センターを設置し、ここを通して地域包括ケア支援病棟、主治医と連携が出来るような仕組みを作ります。これからはこのセンターが重要なものになります。

    4.介護保険料
    現在、40歳から支払いとなっており、特別の事情が無い限り65歳から保険適用を受けられることになっているが、この支払い年齢を40歳から20歳に引き下げることが検討されている。

    5.要支援
    要支援I、IIは介護保険の対象から外され、市町村の事業となった。そのため、その取扱に市町村格差が出るのではと危惧されている。

    6.特別養護老人ホーム(特養)
    特別養護老人ホーム(特養)は介護度3以上でないと入れなくなる。2015年の改正にどこまで組み入れられるかは・・・?であるが、2025年まで介護保険制度は4回の改定があるので、その形が改定毎に決まってくると思われます。

  • 第15回
    病名の無い処方せん?!

    医師が発行する処方せんには病名が記載されていない薬剤師は患者さんが処方せんを持って来られると、
    1.医師はこの薬を何と言って出されましたか?
    2.患者さんに自覚症状を聞く
    3.処方せんの薬品名を見て病気を推察する
    等をして、患者さんの病気を推察して処方せんに記載された薬品の服用方法、保管方法、副作用等、注意事項等々を患者さんに説明をした後、お薬手帳に記載します。

    医薬分業が本格化した昭和60年ごろには、がん、精神疾患等は病名を患者さん本人やご家族に対しても隠す時代でした。当時を思えば、処方せんに病名が記載されていないのは、なんとなく理解できます。しかし、現在は病名を告知し、患者さんも医療者と共に自分の病気の治療に参加する時代です。患者情報を共有してチーム医療を行う時代です。なぜ、処方せんに病名が記載されていないのでしょうか。

    初診の患者さんの場合、たとえば頭痛や腹痛とか熱があるという症状を訴えてきても、医師でもすぐ病名を判断することは困難です。テレビ番組のドクターGをご覧になってもよくわかります。医師が病名が確定するには、患者の状態をよく観察し、当たりをつけて薬の処方をしています。薬剤師は、このためにも疑義照会をして患者さんの状態を、医師と共有してサポートする必要があります。疑義照会は病名のない処方せん、病名が確定するまでの処方せんに対しては、薬剤師の必須の確認事項です。医薬品には鎮痛剤等のように症状を治めるタイプと、降圧剤のように症状をコントロールするタイプの大別されます。
    また、患者さんの年齢、性別、生活環境等々の状態によっても同じ薬でも説明のポイントが異なります。
    既に限られた医師であるが、処方意図を文章にして処方せんに添付してくれる医師も出てきています。いずれにしても薬剤師は、患者さんと対面して状態を聞き、また患者さんの反応を見ながら、服薬のサポートをし、患者さんのかかりつけ医と情報を共有化するように日ごろから務めなければなりません。処方せんに病名を記載して欲しいのですが、案外、病名のない処方せんは薬剤師の力量を試しているのかもしれません。

  • 第14回
    OTCインターネット販売に関して

    先生方は、OTCを取り扱っておられますか?その際、I類、II類を患者様に十分説明(I類は文書で)をしておられますか?
    どうもII類III類は説明がないのが現状のようです。
    その隙をインターネット販売に突かれてしまいました。その上、インターネット販売でも情報を伝達すると言っています。

    では、インターネット販売のメリット・デメリットを考えてみましょう。

    ・メリット
    2025年以降から、国民のほとんどがインターネットを活用可能である。店頭まで行く必要がなく便利である。また、高齢者の増加によって、店頭まで行けない人も多くなってくる。インターネットで購入すれば翌日にでも入手することができる。
    ・・・が、しかし、そこにはOTCが一般の商品と同じとらえ方をされている。という問題が潜んでいる。本当にそれでよいのか?

    ・デメリット
    やはり、一番にあげなければならないのは安全性であろう。
    患者が他の薬やサプリメントを服用しているかもしれない、又栄養、睡眠が十分でないかもしれない。年齢的なことも考慮されなければならない。
    インターネットは自己責任の世界であるから、副作用・相互作用が発生しても患者は自分の責任で処理しなければならない。
    ひょっとすると、生命にかかわる副作用が発生するかもしれない。
    はたしてOTCをインターネットで販売する、購入することを国民は望んでいるのだろうか?自民党政権の安倍総理の財政再建の三本の矢にOTCのインターネット販売が入れられている。
    厚労省は、検討委員会を立ち上げ、OTCの見直しを計りインターネット販売可能な品目と不可能な品目を9月末までに決めるとしている。

    我々薬剤師は慢性疾患を抱えた高齢者の生活支援をすることが求められてくる。OTCはセルフメディケーションの一つの武器である。
    このOTCを対面で活用して患者の生活の質を高めるための役割が我々にはあるのではないか?
    OTCを活用することは、医療費の節約にも貢献することになる。

    総体的にはOTCのインターネット販売の流れは、止められないであろう。しかし、インターネット販売は国民のためにプラスなのか、マイナスなのか?の視点で、且つ薬局・薬剤師の立場で考え、意見を言う時ではないだろうか。

▲ TOP