過去のコラム
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第33回
療養型病床群増加する受診率が高い高齢者、それに伴い増大する医療費、これを抑制する為には高度急性期から在宅までの機能分化と連携が必須である。
一時、約35万床ある療養型病床を20万床にまで削減すると言われてきたが、高度急性期、急性期病床の平均在院日数を12日以内、10日以内、7日以内と短縮を目指すほど在宅との中間の療養型病床が必要となってくる。療養型は亜急性期、慢性期、回復期等々の呼ばれ方があるが、いずれにしても急性期と在宅との中間施設である。
一方で地域包括ケアの考え方が進み、市町村単位または中学校単位での地域でのチームケアの取り組みが進められている。その視点でみると35万床を20万床に削減しても良いのか?と思う。
即ちひとつの地域、人口10,000人当たりに急性期と在宅との間を保つ療養型病床が何床必要なのか?確かに多い所もあるが地域によっては在宅ケア能力が弱く、療養型病床が今以上に必要なところもある。このように地域包括ケアの視点で、先ずは病床数の見直しが行われる。更に医療と福祉の連携の中間拠点となるので、例えば看取りの考え方や、どこまで医療を行うか?等、医療と福祉の共通認識が必要となってくる。
療養型病床は病院でもなく在宅でもない、まさに医療・福祉・住いの三つ揃えと言える。
2025年に向けてこの結論は急務である。
今後は、老健や特養などの施設はその機能の拡大や施設基準の見直しが大幅に行われるものと予想されます。 -
第32回
2025年に向けて 薬剤師の役割医学・薬学等の進歩と生活環境の変化によって、日本人の平均寿命は男性が79歳、女性が86歳、男女平均が83歳となり、男女の平均寿命でみると日本、サンマリノ、スイスの3カ国が83歳で1位(2013年WHO)となっている。とりわけ超高齢社会を迎えた日本においては、脳卒中の後遺症、人工透析、ペースメーカー、在宅酸素、自己インシュリン注射、緩和ケア等、疾病や加齢による身体機能・認知機能が低下している方々の生活サポートが喫緊の課題となっている。
そこで国は国民皆保険制度や介護保険制度などの維持を前提として、2024年迄の10年間での大改革を始めた。その第一歩が、2014年の診療報酬改正である。今迄は診療報酬でいわゆる誘導をしてきたが、これからは医療法などの法律を改正してゆくという。先ずは医療機関の機能分化と効率化であり、特に高度急性期病棟や地域包括ケア支援病棟の新設及び主治医機能を中心とした医療と福祉の連携及びチーム医療の促進である。
薬局は医療提供機関として、薬剤師は医療スタッフとして、チーム医療に参画することになる。これからの薬剤師は医療人として薬の知識を持つ専門家を基本としながら、OTC、サプリメントの活用、より良い看取りを含む在宅医療への関わり、地域における健康ステーションの役割等、更に多職種と協働(チーム医療)して前述の方々の生活支援(睡眠、栄養、運動、心の支援を含む)をすることが求められている。 -
第31回
かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師I かかりつけ薬局
かかりつけ薬局とは?どんな薬局か?
この機能は大きく次の3つがある。(1)患者様が服用されている医薬品の一元管理が出来ること。
特に今後の増加が予想される高齢者は多科受診をすることがほとんどである。内科、耳鼻咽喉科、眼科、整形外科、皮膚科、泌尿器科や歯科等々である。残念ながら、これらの各科から処方される医薬品を医師が管理することは困難である。このことこそが、医薬分業の原点であり、薬局がお薬手帳等を有効に活用し、一元管理することが求められている。一元管理をするためには、処方医との情報の交換および共有が必要である。ただ管理するのみでなく、効能や副作用の有無、残薬のチェック等々さまざまな役割がある。一般に一元管理は相互作用、相乗作用のチェックだけだと捉えがちであるが、一元管理は患者にとって医薬品を服用するに当たっての安全弁となっているのである。(2)24時間対応
発熱や頭痛などの痛み、事故や病気の相談、医薬品やサプリメントの相談等々や患者や一般健康人であってもその相談は夜間・土日・祭日に関係なく発生するものである。これに対応するためには24時間いつでも連絡が取れることが必須条件である。電話で済む話の場合、開局して処方や販売する場合、直接会って相談にのり、必要に応じて受診をすすめることも必要である。必ずしも24時間開局している必要はないが、一般市民にとっていつでも連絡が出来る薬局であることを知ってもらう必要がある。(3)在宅
在宅の範囲が急性期、療養期の入院以外の全てに当てはまるので、今後薬局にとって在宅は必須である。在宅訪問して服薬指導をするのみでなく、医薬品の服用状況、管理状況や患者の症状を把握することが望まれる。そのためには主治医、訪問看護師、介護支援業者、ケアマネージャー等々の他職種との連携が必須である。患者情報を共有化し、薬局の立場から提言できることが求められる。また、今後は麻薬管理、IVH、抗がん剤の配合等々が求められる。以上、(1)~(3)がかかりつけ薬局の大きな機能ではないか?
II かかりつけ薬剤師
Iのかかりつけ薬局の機能を果たすためには、かかりつけ薬剤師の存在が不可欠である。
(1)他職種とのコミュニケーション能力
(2)処方せん薬は当然であるが、OTC・サプリメント等の説明が可能なこと
(3)患者、または一般市民が健康相談できる最低限の健康に関する知識を有すること
(4)患者・一般市民から信頼される薬剤師であること以上、(1)~(4)が、かかりつけ薬剤師の最低条件である。
あの薬剤師がいるから、あの薬局にいこう!
と、患者や一般市民に思ってもらえることが大切である。厚労省は健康づくり支援薬局(仮称)設立の検討を行っている。これからの薬局・薬剤師は今まで以上に国民の健康に資する働きができなければならない。
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第30回
薬価基準制度薬価基準とは医療保険で使用できる医薬品の品目を定め、同時に医療機関や保険薬局に支払われる公定価格である。最終的に中医協で決定され、厚生労働大臣から告示されるものである。この制度は1950年(昭和25年)に当時の物価庁の所管でスタートし、1953年からは厚生労働省の所管となった。
現在(平成26年の統計)によれば、薬価収載品目は約18,000と言われている。薬価は全国一律の公定価格であり、一種の社会主義である。製薬企業にとっては薬価に収載されることは医療保険で使用されることになるため、国民皆保険の我が国においては薬価収載されることは営業的にもプラスである。
薬価の定め方は簡単に言えば市場が大きい(患者数が多い)医薬品は安価に、
市場が小さい(オーファンドラッグ)医薬品は高価格がつけられている。また、一つの品目で言えば
注射 > 内服 > 外用 となっている。製薬企業は一つの効果を目的として、臨床治験を行って薬価収載を狙うが、薬価が決まると他の効果を狙っていわゆる追加効能を目的として臨床治験を行い市場を拡大しているのである。
先に述べたように、薬価は公定価格で全国一律(社会主義)であるが、これを流通させている医薬品卸売販売業から医療機関や保険薬局への販売は自由となっているので当然のことながら、薬価と購入(販売)価格との間に差が生じる。これが薬価差であり、医療機関および保険薬局の利益となる。したがって厚生労働省は診療報酬が2年に一度改定されるので、これに併せ2年に一回医薬品の流通価格を調査し、その差額を薬価に反映させて下げているのである。或る意味では薬価制度は医薬品の価格を下げる制度ともいえる。
薬価がついて、市販されてから10年以上経過した医薬品は長期収載品として別途に薬価が下げられている。
医薬品は開発されて20年~25年経つと特許が切れる。すると、同一成分のいわゆる後発品(ジェネリック)が市場に出てくる。この後発品は先発品のように開発の費用がかかっていないので、後発品の薬価は先発品の薬価の60%からスタートする。10社以上から後発品が発売されると50%からスタートし、その後は先発品と同時に2年ごとに実勢価格が調査され、薬価が下げられる仕組みとなっている。国は医療費を節約するために後発品の使用を促進・誘導している。現在、医薬品の50%を目標としているがその目標を80%に上げ、極端に言えば後発品があれば先発品を使えないようにすることを考えている。患者がどうしても先発品を希望すれば後発品との薬価差額を患者自己負担にしようと言う考えも検討されている。
医薬品は診療報酬の約22%を占めているので、市場は約9兆円と言われているが、後発品の占める割合を80%にすることにより、約1兆500億円ぐらいを節約したいと考えられている。
後発品は先発品と同一成分であり、効能効果は先発品と変わらないはずである。
先発品はより効果があり、副作用が少ない医薬品であるが、その分リスクもある。後発品は先発品として20~25年以上使用された医薬品であり、効能も副作用もある程度予測されている医薬品である。
医療費の22%を占める医薬品が50%となっても、実際の支払いは11%しか下がらないので患者側から見ると下がったことをそんなに感じられないのが現状ではないだろうか?
消費税が平成28年に10%となるため、28年、29年、30年と今後は毎年薬価調査が行われ、薬価が下げられる。薬価に消費税がどのようにつけられているかは説明が困難であるが、一応は薬価にのせてあるというのが厚生労働省の説明である。従って医療機関および、保険薬局は医薬品を購入する時は消費税を外税で購入し、調剤報酬を請求するときは薬価で請求するので何か損をしているように感じている人が多い。
いずれにしても国民皆保険制度を維持するために財政的にも後発品の使用は避けられないのが現実であると思う。
医療機関・保険薬局は患者に後発品使用の意義をよく理解されるように説明することが重要であると思う。
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第29回
マイナンバーはどこまで活用されるのか?平成28年1月よりマイナンバー制度が施行される。本来、住民基本台帳が平成11年6月に公布され住民ナンバー制度が発足している、この住民基本台帳の最大の目的は本人の身分証明書の役割である。
それに関連して
イ. 住民票のコピー
ロ. 図書館の利用
ハ. 健康検診とその相談
ニ. 救急医療のための情報提供
ホ. 災害時等の安否確認
等々に使用される事になっており、特にIT化によるカードで利用できることで推進されてきた。しかし、残念ながら国民の理解が不十分で自治体によってはそのセキュリティの保全が十分できていないのでは?という観点もあり、現状では5%の普及率と言われている。そこに、このマイナンバー制度が住基法と重複して施行されることになり、平成27年10月には国民一人に12桁の番号がつき、平成28年1月に施行される。このマイナンバー制度の目的は国民一人一人の収入資産を正確に把握し、税収入を正確に確定できるようにしようと言うものである。ところが、まず、この12桁のナンバーをどこが発行するのか?多分、市町村が発行するのだと思われるが、管理はどこがするのか?が現時点で定まっていない。
将来は収入のみでなく、住基カードにある検診や、出来れば健康保険証の代行もでき、そしてクレジットカードの様に代金の決済までできることを検討している。現在、公的な顔写真付きの身分証明証はパスポートと運転免許証しかないので、本人確認はマインナンバーが出来れば容易となる。
医療に於いては、重複受診の抑制や、お薬手帳の代行も可能であり、その他の買い物等の支払いにも使用できるとなれば大変効率が良い。しかし、高齢者が多くなる我が国において、このカードを紛失したらどうなるのだろうか?
また、年金基金情報が流れたように、マイナンバーの個人情報が流出し、さらに悪用される恐れはないのか?マイナンバー制度が定着すれば住基法は消滅すると思う。しかし、上述したようにマイナンバーをどこまで活用できるか?その利用範囲と情報保護をどうやって確保するのか?が大きな論点となるだろう。
とりあえずは国民一人当たりの収入と資産を把握し、税の公平化と脱税を防ぐことからスタートするが、国民の理解を得てからでないと住基法のように施行されたが普及しない結果となるだろう。
国が国民一人一人の情報を管理することは法律上の種々の問題を抱えることになるので、その活用範囲の拡大は慎重に行われる必要がある。利便性と危険性は表裏一体である。
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第28回
院内薬局医療の規制緩和の中で院内薬局について議論されている。今回はこの問題を考えてみよう。
I 病院側のメリット・デメリット
a.メリット
イ.家賃がとれる
ロ.患者が定着する可能性が大きい
ハ.病院薬剤師が入院患者に集中できる
b.デメリット
イ.病院と薬局とで経済的つながりが強いと疑われ易い
ロ.調剤ミスの責任から病院は逃げることが出来るのか?II 薬局側のメリット・デメリット
a.メリット
イ.患者数が安定する
ロ.疑義照会しやすい
ハ.使用医薬品の配置が準備しやすい
ニ.病院に信頼されているように見える
b.デメリット
イ.他の医療機関からの処方せんが来ない
ロ.処方せん調剤だけで経営が安定するか?III 患者側のメリット・デメリット
a.メリット
イ.便利である
ロ.医薬品の一元管理をしてもらいやすい
b.デメリット
イ.他の医療機関にかかるときに困る
ロ.同じ病院内でもらうのに薬代が高いIV 医薬分業の視点から
先ず、処方せんは患者のものであるので医療機関側が薬局を指定することはできない。しかし、人口の高齢化で医療機関、薬局と二度足を運ぶことが困難な人が増加した事や、地域包括ケアで患者情報を共有化し、チームで見守ることが必然的になってきたこと、そしてそこにやってきたのが規制緩和の波である。
門前薬局、門内薬局、院内薬局と、経済的な誘導とみられることがない限り、患者にとっても利便性が強調されて来ているので、近い将来に院内薬局は認められるのではないか?と思われる。花屋、レストラン、喫茶店、コンビニが病院内で経営をはじめており、その中で薬局だけが入ることは出来ないという法的根拠が無いのではないか?
今後の推移を注視したい。 -
第27回
健康保険制度を維持するためにI 健康保険料の値上げ
一番簡単な方法であるが、あまりに上げると未納者が増加する事が予想される。
II 高額医療費限度額の引き上げ
2014年現在
↓一般的に
10%負担 外来 12,000
入院(世帯単位) 44,00030%負担 外来 44,000
入院(世帯単位) 80,400これを引き上げることによって、患者の自己負担額が増加する。しかし、この限度額以上の医療費は保険によってカバーされる我が国の健康保険制度のもっとも良い所であるが、その反面、財源を圧迫している。
III 包括化の促進
本来我が国の健康保険制度は出来高制が原則である。
イ.大病院で行われているDPC(疾患別分類による包括)の範囲を拡大する。
ロ.慢性疾患は初診は出来高であるが、再診からは包括化する。IV 健康保険適用範囲を小さくする
本来、健康保険は病気の治療のためのものであるからして、予防的なものの除外が検討されている。予防的なものの例としては以下の通りである。
イ.ワクチン類
ロ.高血圧病等
ハ.薬価の安い後発品の使用を法制化する
ニ.安全性の高い薬はOTCとするV 混合診療の範囲を拡大する
本来、我が国の健康保険制度は混合診療を禁止してきた。2004年に混合診療の大幅な拡大が認められました。しかし、今後は
イ.高度先進医療
ロ.再生医療
ハ.分子標的薬 等
高額で且つ、先進的な医療は自己負担として一般的医療の保険適用と混合する診療を可能とする。VI 医療機関の機能分化と効率化
医療機関や医師の偏在をなくし、一方で患者のドクターショッピングをさせない
イ.高度急性期病棟
ロ.急性期病棟
ハ.慢性期病棟
ニ.回復期病棟
イとロは出来高、ハとニは包括制VII 主治医機能の強化
かかりつけ医、家庭医、総合診療医等々の言い方があるが、今回、国は主治医と表明した。
主治医は
イ.専門医への紹介
ロ.病院への紹介
ハ.福祉への紹介
ニ.患者の生活全般をみる
ホ.チーム医療の中心となる以上の他にも色々な方法が考えられるが、要は皆保険制度を維持するためであることを再確認することが必要である。
まとめ
上記のように、健康保険制度を維持する為の方法は色々あるが、2024年までに具体化されていき2025年以降の高齢少子化の我が国の保険制度が完成されると思われる。今後10年間の動きに注目していこう。
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第26回
医療事故最近起こった二つの事故について、考えてみよう。
1.G大学の例
開腹手術を10例、腹腔鏡手術を8例、これらの手術を全て1人の医師が執刀し、術後半年以内に患者全員が死亡した例である。
しかも1例にいたっては、ガンでないにも関わらずカルテを改ざんし、ガン患者として執刀したのである。医師の技量不足とは言え、これは殺人行為である。先ず、病院には術後経過のフォロー義務があるにも関わらず、フォローがなされていない。その上、18人もの患者の死亡がたった1人の医師の下で起こっているにも関わらずチェックすることができなかった病院の責任は、組織としても由々しき問題である。
疾患について、手術方法、予想される後遺症等々、手術前に患者本人およびご家族に十分説明をして同意を取る必要があるが、これらがなされていなかったのではないだろうか?
本来、開腹等のように、身体に傷をつけることは傷害罪にあたる。ただ、医師であるからこのような行為が認められているのである。
また、この医師は学会で症例発表の際、これらの患者の術後の経過は良好だと述べている。このことは殺人のみならず、詐欺行為でもある。医療人として、医師として、倫理に欠けている。この様な医師を雇用していた病院にも大きな責任がある。
2.某女子医大の例
手術後に集中治療室で人工呼吸器をつけられている2歳の男の子が全身麻酔剤「プロポフォール」を過量に投与され死亡した例である。この医薬品は小児への投与は禁止されているものである。
一説によると、この病院では「適応外効能に対する治験」が行われていたのではないか?と言われている。「適応外効能に対する治験」とは、正式には認められていないが、効能があるのでは?と考えられ行う治験のことである。この治験を行うに当たっては、現時点で認められていない効能を目的とする使用であるからして、当然、患者本人および、ご家族への説明と同意が必要であるが、この病院では恐らくなされていなかったと思われる。また、この薬は小児への使用が認められていない医薬品であるからして、これを小児に使うこと自体、説明が必要不可欠な治験であると言えよう。しかも、この治験によって、子供が何人か死亡しているとも言われている。
さらに問題なのは、1人の子供がこの医薬品をどれだけ投与されたのか?また、使用総量を誰ひとりとして把握していなかったことである。医師の処方は病院の薬剤師に流され処方されるのだが、処方を受け取った薬剤部はこの異変に気付きはしなかったのだろうか?
これら1.、2.の例は医療に対する信頼を大きく損なうものであると同時に、人道上も許し難いことである。
交通事故等は国の調査委員会が入り、調査の上、人為的ミスがあれば刑事事件として扱われる。医療に於いても、同様に国の調査を行い、明らかな人為的ミスであれば刑事事件として扱うことを定める法律が必要である。
昨今では産科医、外科医のなり手がすくないと言われているが、それは何かあると直ぐに患者から訴えられることも原因の一つだとも言われている。
しかし、今回の場合は患者・ご家族への説明と同意が不十分であること、カルテが改ざんされていたこと、小児への投与が禁止されている薬を同意無しに投与したこと、医薬品の使用量が不明等々、病院の体制そのものに問題がある。大学病院という、一般市民が信頼している医療機関で起こった出来事であるだけに、この問題はとても大きい。両大学病院の患者のご家族が訴訟に向けて動いているそうだ。
国も、特定機能病院の資格を外すことも検討しているようであるが、それは当然のことである。医療人には、医の倫理を改めて考えてみてほしい。と強く思う。
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第25回
薬剤師を取り巻く環境A.仕事場の変化
イ.製薬メーカー
開発、学術、研究部門に一部必要なだけでMRには不要になってきた
ロ.病院(20床以上)
8,000軒を切る数となった、院内処方せんによる調剤業務はあるが、主体は病棟業務である。その中でチーム医療の中に参加する知識とコミュニケーション能力が問われる。
ハ.医薬品卸
ほとんど必要ない
ニ.薬局
2013年現在、57,000軒と言われているが、どんなに増えたとしても60,000軒が限度だと思われる。処方せん受取率は2013年現在で70%と言われているが、この率は分業の限度であろう。
調剤は処方せん枚数に影響するのでOTCやサプリメント、医療介護用具を取り扱ったり、いわゆるドラッグに転換するところが増加すると予想されるが、調剤以外では薬剤師は不要である。特にOTCの2類3類は登録保険販売員で十分である。IT化の普及により、インターネットでの医薬品購入が可能になると、ますます薬剤師の必要性がなくなる。薬局が薬剤師の主たる仕事場であっただけに今後の変化には注目していく必要がある。1935年ころの日本人の平均寿命は40歳であったが現在は男性80歳、女性86歳と、いまにも寿命が100歳にならんとしている。しかし、加齢による機能低下や難病、障害を持った人もそれなりに長寿となる。がん、認知症も生活習慣病と言われる時代になった。薬局に勤務する薬剤師はこれらの人々の生活をサポートすることが必須となる。すなわち、睡眠、食事、運動、心のケア、これらにどれだけ関与できるのか?である。患者さまの服用薬の一元管理は当然のことであり、医療人としての薬剤師は正に薬剤師法にある国民の健康に資することが義務なのである。
ホ.在宅
高齢化に伴い、自宅や施設で療養、また生活する人が増加する。薬剤師は他職種と連携して在宅患者をサポートせねばならない。本来、薬剤師の業務は店舗を拠点とすること。となっているが、この在宅業務は一歩前進したものと言える。医師また、看護師がどこででも仕事が出来るように薬剤師もそうあるべきなのではないか?訪問薬剤師の出現もそう遠くではない。国民が健康相談を出来る専門家として薬剤師を必要としてくれないと薬剤師の仕事は無くなるのである。B.薬剤師の数
タンス薬剤師を含めて2013年現在 26万人と言われ、医師30万人に対し、先進国では多い。そのうち16万人が薬局勤務と言われている。1年に約7500人の薬剤師が誕生しているが(国家試験合格率50%)、最近では合格者には女性が多く、田舎は嫌だ、残業は嫌だ、土日祝日の勤務は嫌だ、在宅訪問は嫌だ、という薬剤師が増加しているため、薬剤師はまだ不足している。と言われ、60歳70歳の薬剤師がいまだに仕事をしている現状である。
2050年には日本の人口が減少する(約8,000万人を切る)と予想されている今、薬剤師は如何にあるべきかを真剣に考え行動することが必要である。処方せん枚数もこれ以上の増加は見込めない、ジェネリックの多用により処方せん一枚当たりの単価は現在の7000~8000円から下がるであろう。セルフメディケーションの普及により、OTC、サプリメント等の説明や、インフルエンザ、風疹等のワクチンの説明も求められる。放射能、PM2.5への対応など、あらゆる薬事衛生の分野に仕事を拡大する(それが本来の業務である)ことが必要となる。C.まとめ
IPS細胞や、DNAによるオーダーメイド医療等々、高度に進歩する医療に薬剤師が医療人として対応していくためには、常に患者様、他職種の方々と接して現場の変化を敏感に捉えて行動する以外にはない。 -
第24回
今後の医療保険制度改正の動向我が国の高齢化が急速に進むため、2025年までに医療保険制度の改定が求められている。
1.国民健康保険の安定化
高齢化に伴い、国保の対象者が増加する。そのため、国保の財政基盤を確保する。特に国保は都道府県を主体として市町村との役割分担を明確化する。2.高齢者特に、後期高齢者(75歳以上)の保険料は総収入制によって定める方向
3.医療費適正化計画の見直し
従来から策定されていた計画を改めて都道府県単位で、特に地域包括ケアの視点から計画を見直すこと。(医療資源の適正配置)4.疾病予防、健康増進づくりへの評価
従来にない注目すべき項目である。個人または、保険者が予防、健康作りを行うことを評価するものであり、具体的には、特に栄養指導に重点がおかれている。5.入院時の食事代
従来、疾病に対する治療食は保険の対象となっていたが、これを自己負担とする。6.紹介状なしでの大病院の受診
500床以上および、特定機能病院を紹介状なしで受診すると5千円~1万円の特別料金を支払う事となる。大病院とは病院機能分化で検討されている高度急性期医療病棟を意味するものと思われるが、一応500床以上となっている。7.患者申出療養(仮設)の創設
高度医療(先進医療、再生医療等)や未承認薬等の使用を患者の申し出により、自己負担で実施可能とする制度である。無論、患者の自己責任によるが混合診療の第一歩とも考えられる。以上、1~7の検討がなされているが、地域包括ケア支援センターの設置による地域づくりと連携して2018年2024年の医療介護の同時改定に向けて着々と検討されている。